【語学buy恩人】としては、安定化しているアンケート評価の動向をまとめるという形よりも、「語学学習のヒント」として、アンケート対象とは切り離して前向きにまとめる方が良いのではないかという結論に達し、本ページを第1回として【buy恩人】ガリレオが担当致しました。

今後の語学学習の方略の足下を固めていく上でのご参考にしていただければ幸いです。

語学習得における認知心理学からのアプローチは随分と活発に行われているようです。
実は、語学ではありませんが、僕の娘の修論が、まさに認知心理学的アプローチの発達教育に関する論文です。
僕は、具体的な数学問題において、認知過程的な解説という切り口で資料化を目論んだのですから、その血筋があったのかもしれません。

ネット上で見られる文献や論文は、指導者としての方略を確立するという目的ですから、やはり学術用語も多く、一般の人々には、少し敷居が高いのは致し方ないのですが、その中で、語学を学習する側の立場からも分かりやすいものを少しずつ拾っていくことで、語学学習法がくっきりと浮かび上がって来ます。

実は、僕自身の学習方略(語学ではありません)の理論的な裏づけを取るために、調査を始めたというのが正直なところなのですが、文献や論文はなかなか面白いですね。

と言うのも、僕自身が受験指導してきた方略が間違っていないどころか、効果をもたらす主幹部分として結論されている研究が多いものでしたから、それで図に乗ったというわけでもないのですが、これらの学術的な成果とシンクロしながら、どこをつつけば誰もが向上していけるのかを「インターフェイスする」といったスタンスで伝えていきたいと考えています。

僕自身は、松平勝男先生のように、成人者の語学学習上達に関する方略や暗黙知をお伝えできる資格はありませんが、受験英語に関しては過去の指導実績における方略をお伝えできる立場にはあると考えていますので、このエビデンスを確認しなければという思いがあったわけです。

まずは、第1回目として、語彙学習に関して、流通科学大学 専任講師 水本 篤 氏が甲南女子大学で指導されていた折の論文がありましたので、これを採り上げたいと思います。
「大学生の語彙学習方略使用と学習成果の関係」と題した論文です。

論文をご紹介する前に、水本 篤 氏が本論文でも助言を頂いたと謝辞を呈されている関西大学竹内 理 教授は、この分野では無くてはならない研究者であられるようですから、先にご紹介しておきましょう。

竹内 理 教授は、外国語教授法の分野で精力的な活動をされている研究者であり、語学教授法
関連の研究論文には必ずと言ってよいほど氏の論文や文献が引用されています。

著作「より良い外国語学習法を求めて―外国語学習成功者の研究」は、その最たるものであり、且つ非常に評価が高いようですね。

こちらの著作は、次に予定しています第2回のヒントで採り上げる論文にも、もう一つの古き文献と比較・対照することで、総合的な英語学習の姿を浮かび上がらせるものとして引用されていましたので、学習者にとっても、非常に有用な書であることだけ頭に入れておいていただければと思います。

ただ、一般の学習者が読まれる場合は、「達人」の英語学習法―データが語る効果的な外国語習得法とはの方が、読みやすいかもしれません。

これから英語(語学)をマスターしようとする人は、何を信じて学習していけばよいのかという岐路に立ったとき、道を誤らないための羅針盤の役目をしてくれることでしょう。

少なくとも、「右脳を鍛えるだけで」とか「聞き流すだけで」とか「超速」などの言葉につられて無駄な出費をすることを防いでくれるはずです。


一方、本末が転倒しましたが、水本 篤 氏のTOEIC TEST用に書かれた単語集も非常に評価が高いものでした。
その通り、現在の水本 篤 氏は語彙に関する研究を主とされているようです。
また、英検第二次試験面接委員も務めておられるようですね。

さて、本論文は、タイトルだけでも充分にあなたの興味を引くことだろうと思います。
認知心理学的アプローチの論文は、用語の定義さえ掴めば、大要は掴めますし、統計数学の基本を勉強すれば、データが意味するものも読み解けるものですから、本論文も、是非読まれてみては如何でしょうか?

また、本論文における語彙学習の実験データでは、
1.習熟度の指標としてTOEICを採用されていること、
さらには、
2.被験者の水準がTOEIC受験者の平均レベルであること、
の2点をお聞きになると、特に大学受験生やTOEIC受験生で語彙力に悩みを抱えているあなたなら、ますます興味を惹かれるかもしれません。

その通り、語彙の習得に関して、指針を考え、方略を見直すヒントになるのではないかと思われました。

“Without grammer very little can be conveyed. Without vocabulary nothing can be conveyed.”「文法と語彙、特に語彙を習得せねば、外国語学習は始まらない。」というELT研究者David Wilkinsの言葉から、この論文は始まります。

仔細は論文をお読みいただくと理解していただけますので、ここでは、実験的データから得られる結果で、学習する側から最も気になる結論だけをご紹介しておきましょう。

方略と学習効果の関連は、本論文では、熟達度と語彙サイズ(ボリューム)という2つの指標から結論されているのですが、ここでは、その2つをトータルした「語彙力」としての結論として、僕の中での「誰にでもできる重要度順」に書き出しておきます。

■語彙力と最も大きい相関を持つ方略(戦略=strategy=ストラテジー)

  1. 語を実際に使用してみて覚える
  2. 辞書を引くときには関連性のある言葉も同時に覚える(メタ認知的)
  3. 語の接頭辞・語幹・接尾辞を分析したり語源から理解する
  4. 興味のある単語・重要そうな単語は調べる・書き留める。(メタ認知)
  5. 文や文脈と一緒に覚える
  6. 学習時間をしっかり取る(メタ認知的)
  7. 学ぶべき語かどうかを判断する(メタ認知)

※今後のヒントシリーズでも、おそらく「メタ認知」という言葉が頻出してくると思いますので、

「メタ認知とは?」として、この下に概要を説明させていただきました。
語学に限らず、学びに関する行為には「メタ認知」が最も大切な要素であることがあらゆる研究から結論されています。

さて、これらの方略を使っている生徒は、語彙力が優秀であるという結果が出ているわけです。
僕としては、当たり前と言えば当たり前の結果だと思ったわけですが、あまりにも意外だったのは、「実際に使用してみる(書いたり話したり)」と「語の構造を利用する」という2項目の値の低さでした。

「実際に使用してみる」が少ないのは推測もできたのですが、接頭辞・接尾辞・語幹を分析するということを意外に知らない、あるいは行わない人が多いことには正直驚きました。

和気布由巳さんの
暗記ナシ・簡単・短期で語彙力を3倍以上に!Voca Boost(PDFファイル62ページ)は、
その接頭辞や接尾辞についてまとめられていますので、ご参考までにどうぞ。

次に、目を引いた結果は、視覚による反復は語彙サイズや熟達度とは有意な相関はない。
(Gu & Johnson 1996の研究では負の相関)という結果でした。

当然の結果とは思い、ワクワクしながら項目と対照してみると、「書く」という言葉が前面出ており、「これは、視覚とは違うだろう!?」と大いに不満を持ったのですが、最後まで読むと、さすが研究者、その部分は今後の課題として弁明されていました。

実は、僕は語彙力アップに関しては、「ビジョン」においても、「音読しながら書く」ことの重要性は説きながらも、「反復」特に「書く反復」は、それほど重要視していません。
単語を10回も20回も書いても意味は無いと考えているからです。
そして、それ以上に目で追うだけの反復はさらに意味が無いと考えています。

総体的に見ていくと、僕が書いた受験英語のストラテジーとも、学習時間については言及していない点(実は、単なる暗記であればという仮定の下に逆言及はしていますが・・)以外は、見事な一致をみると感じました。

本論文にあった、4つのクラスター分類とその人数比率も、大変参考になるものです。
自分は、今、どのクラスターに属しているのか自己分析をされて、不足している方略を検討し、留意されると一歩前進されるのではないでしょうか?

全体を通して感じた問題点は、辞書を使用したり、ノートに書き留めるという作業を「面倒くさい」という理由で行わないが故に、第一の壁を破れない学習者が多いということでしょう。
あなたのように、仮にも英語が上達したいという思いを抱いている一群でデータをとれば、もう少し、これらの数値は上がるとは思うのですが・・。

本論文の最後には、実際の実験にあたっての質問項目が全て記載されていますので、これらに回答し、実験データから結論されることと対照することで、今後の自らの方略を考えるヒントにすることができるのではないかと思います。

メタ認知とは?

メタ認知とは、

  • 自分自身の認知行動を認知していること
  • 把握することができる自分の認知過程とその制御についての知識

即ち、「認知的進歩を意図的に監視するために行う心的操作や活動」と定義されています。

具体的には、ブラウン(Brown,A.L.et al.1983)によると、

  • 計画する(時間と資源を予定する・結果を予測する)
  • 監視する(テストする・修正する・予定を作り直す)
  • チェックする(結果を評価する)

などの自己統制(自己制御)活動のことを言います。

噛み砕いて言うと、常に円錐の頂点に立って、底面に居る自分を客観的に鳥瞰しながら、
プランを立てては遂行し、適宜修正を加えるなど、自分自身の司令塔になるイメージで僕は捉えています。

ですから、一つの課題遂行に関して、「認知」が直接的・非管理的作業であるのに対し、
「メタ認知」は間接的・管理的な作用を及ぼすものと言えるでしょう。
言わば、「やる気を起こさせ課題を遂行させるための統括管理部門」とも言えますね。